象の鼻-麒麟の首筋.com

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深海で肥大するウミグモのように、思春期のエゴは現代でこそ無限に肥大する ~てらさふ 朝倉かすみ~

さいきん芥川直木賞関連の作品の読み込みをさぼっている。前回記事を更新してからの2週間は、結構体調を崩していた。その間、『楢山節考』『スタッキング可能』『異人たちとの夏』『海と毒薬』『ららら科學の子』『パンク侍、斬られて候』などを読んでいた。…

第159回芥川賞⑭ 受賞作予想「風下の朱」古谷田奈月(『早稲田文学』2018年初夏号)

五代文芸誌にばかり目を取られていた私を嘲笑うように飛び出てきた候補作。ここ最近の傾向から考えれば当然あり得る線だったのだ。早稲田文学。小説トリッパーは見ていたのだが、分量的に芥川賞の範疇だった高山羽根子さんの掲載作はあまりピンとこなかった…

第159回芥川賞⑬ 番外編Ⅰ 直木賞受賞作予想『ファーストラヴ』島本理生(文藝春秋刊)

受賞作予想編、開幕からいきなり番外編。島本さんの直木賞候補作『ファーストラヴ』を読んだ。 ファーストラヴ 作者: 島本理生 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/05/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る いまリンクを張り付けて気付いた…

第160回芥川賞② 候補作予想「宮水をめぐる便り」二瓶哲也(『すばる』7月号)

159回の候補作が先日発表された。本当に松尾さんが(いまさら)候補に挙げられるとは。そして「藁の王」「泥海」が候補に挙げられないとは。結構驚きの結果だった。 世間が159回芥川賞に盛り上がり始めたところで、パイオニアであるおところの私は半年以上先…

第159回芥川賞⑫ 候補作決定(直木賞も)

ついに決定した第159回芥川賞候補作(と第159回直木賞候補作) 私なりの芥川賞候補作予想は次の記事にまとまっている。 tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com 芥川賞直木賞それぞれ以下の作品が候補となっている。

第160回芥川賞① 候補作予想「窓」古川真人(『新潮』7月号)

159回の候補作はまだ発表されていないが、160回は待ってくれないのだ。さっそく候補作を予想してゆこう。 今回は古川真人さんの「窓」を取りあげる。『新潮』7月号掲載作。 新潮 2018年 07 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/06/07 メディア: 雑誌 …

光を生み出す職業と闇を見つめる職業

アイドルは、前者 学校の先生は、後者 大工さんは、前者 音楽家は、後者 作家さんは、たぶん前者 詩人は、絶対後者 パイロットとか花屋とか地雷除去員とか象使いとかテーラーとか花火職人とか タクシーの運転手とか石屋とか手妻師とか蛇使いとかパーラーとか…

方言はカレー味

私は普段、小さいメモ帳を持ち歩いている。電子端末のメモ機能、ではなく、紙とペンである。そこに書き連ねるのは生の衝動、のようなものが多く、あとで見返してみるとそこには勢い以外に何もなく、意味を抽出するのは困難を極める、ということが多い。 松尾…

剥き出しの人間性~永沢君 さくらももこ~

永沢君といえば、ちびまるこちゃんの登場人物であるタマネギの名前である。『永沢君』は彼と、彼の友人である藤木君小杉君にフォーカスを当てたスピンオフ作品である。 永沢君 (イッキコミックス) 作者: さくらももこ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2003/…

第159回芥川賞⑪ 候補作予想まとめ

第159回芥川賞の受賞発表は7月18日(水)に行われるそうだ。 www.bunshun.co.jp 候補作は受賞発表のだいたい一か月前に行われることが多い。今回ならば6月18日あたりだろう。 追記:ドンピシャで6/18だそうだ それに先駆けて候補作から予想するという不毛な取…

第159回芥川賞⑩ 候補作予想「藁の王」谷崎由依(『新潮』6月号)

もしかして2018年上半期は豊作なのではないだろうか。 新潮6月号に掲載された谷崎由依さんの「藁の王」を読みながらそんなことを思った。 新潮 2018年 06 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/05/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 原稿…

小説だからこそ、ってなんだろう

私は小説が好きなのだ。読書が、文字を読むことが好きなのだ。活字離れなんて言葉もそこかしこで聞かれる世の中で、私は文字を読むことに飢えている。 私はなぜ活字離れができないのか、なぜ世間では活字離れが進んでいると言われているのか。この不可思議は…

第159回芥川賞⑨ 候補作予想「美しい顔」北条裕子(『群像』6月号)

昨年の芥川賞は上半期157回、下半期158回ともに新人賞受賞作が受賞した。 こういう流れは案外無視できないものなので、講談社が刊行する『群像』の新人賞「群像新人文学賞」の受賞作を読んでみた。 群像 2018年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売…

無償の愛の重さ 〜かがみの孤城 辻村深月〜

端的に結論を述べる。 とても良い作品だった。 学校へ通えない子ども7人に与えられたかがみの中のお城。「城にはなんでも願いが叶う鍵」があり、彼らはそれを見つけようとする。 導入からしてファンタジーである。ファンタジックな世界設定も嫌にならず読み…

おそらく、いまのわたしの大部分を形作るものたち 他人にムリにでも押し付けたい作品群

ある友人から「オススメの本のリストを作ってほしい」と言われた。いい機会なのでこれまでに溺れるほどに摂取し続けた作品群の中から選りすぐりの「いやだと言っても無理にでも押し付けたい作品群」リストを作ってみようと思う。本に限らずアニメや漫画も存…

夏が待ち遠しいという感情、青春は頭上を素通りしていった 神聖かまってちゃん(鈴木瑛美子×亀田誠治)”フロントメモリー”

昨日、サイダーガールというバンドの「パレット」という曲がとてもいい、エンリピしていると言った舌の根も乾かぬうちに次の曲である。 神聖かまってちゃんという名前はどこかで聞いたことがあった。しかし実態を全く知らず、地下アイドルかなんかだと思って…

美少女、ジェンダー、価値、偏愛 サイダーガール ”パレット”

最近セクハラが社会現象になっている気がする。人が嫌だと思うことをするな、という大原則が守られれば根本的な問題の大半は解決するのだが、人は自分が責められる事態に直面すると、非を認めにくい傾向にあるようだ。それだけでは解決しないのは女性側が立…

第159回芥川賞⑧ 候補作予想「もう『はい』としか言えない」松尾スズキ(『文學界』3月号)

松尾スズキさんはずいぶん前に二度ほど芥川賞の候補になったことがある。演劇畑の方が芥川賞を受賞するというのはときどきあることで、第156回の山下澄人さん、第154回の本谷有希子さん、古くは第116回の柳美里さんや第88回の唐十郎さんもいる。 それにして…

第159回芥川賞⑦ 候補作予想「羽衣子」木村紅美(『すばる』3月号)

木村さんは前回の芥川賞でも候補入りしていた。 tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com 前作では概ね佳作だとの評価を得ながらも、受賞へと突き抜ける力は足りないとの評が下された。 私は前作を読んで 端的に言えば、作品世界がきれいに映像化できた、という…

第159回芥川賞⑥ 候補作予想「あなたの声わたしの声」小山内恵美子、「団地妻B」樺山三英(『すばる』4月号)

お次は『すばる』。『週刊少年ジャンプ』で有名だが、文芸雑誌も発行している。それが『すばる』である。 すばる2018年4月号 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/03/06 メディア: 雑誌 この商品を含むブログ (1件) を見る 今回は小山内恵美子さんの「あな…

第159回芥川賞⑤ 候補作予想「少年たち」水原涼(『文藝』夏号)

今回で文藝夏号の中編一挙掲載に関する文章は最後である。 トリは「少年たち」。作者の水原涼さんは文學界新人賞の出身で、受賞作は芥川賞候補にもなっている。箸にも棒にもかからなかったようだが。 今作はどんなものだろう。早速読んでみる。 文芸 2018年 …

最悪の状況

深刻な場面 全員が作業に終われているときに一人が辞めたいと言い出す リーダーのYさんと辞めたいKさんのやりとり K:すみません。明日からもう来ません。 Y:ん?どういうこと? K:辞めます。 Y:え?なんで?というかこの状況でそんなこと言うの? K:す…

第159回芥川賞④ 候補作予想「しき」町屋良平、「リーダー」松井周(『文藝』夏号)

今回は一気に二作読んだので、紹介も同時に行う。 文芸 2018年 05 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/04/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る

いつ聴いても泣きそうになる ももいろクローバーZ ”パカッポでGO!”

私は結構アイドル好きだ。なかでもももクロは一等好きだ。 はじめは軽い気持ちだった。今は昔「はねるのトびら」という番組でドランクドラゴンの塚地さんが紹介していたアイドルグループ、それがももクロだった。 ちょうどそのころ発売されたシングル”猛烈宇…

第159回芥川賞③ 候補作予想「サーラレーオ」新庄耕(『群像』5月号)

読みましたよ。新庄耕さん。「サーラレーオ」 はじめに言いますが、超傑作です。面白い小説を求めている人は5月号の『群像』をお求めください。 どこがどう傑作なのか、評論や解説といったたぐいのことは、作品とある程度距離が置けないとできないのだと思い…

雨と反抗期の思い出

普段私が文章を書くのは、平穏な生活が過ぎ去る時の中で自分に芽生えた何かをこの世に残しておきたいと思うときだけである。 しかし今回は何もないところから無理やり文章をひねり出してみた。4000字弱、何の内容もない文章を書くのは何かの訓練にはなったと…

芥川賞受賞作品への評価

先の記事で陣野さんの作品を酷評してしまった。好みに合わないとどうしても評価をしにくくなってしまう。芥川賞予想をするとき以外は、よほど心に深く刻まれた作品しか取り上げないので好みでない作品を評価することに慣れていないのだ。陣野さんはお忙しい…

第159回芥川賞② 候補作予想「泥海」陣野俊史(『文藝』夏号)

河出書房が発行する『文藝』は、五代文芸誌の中で唯一の季刊誌である。現在発売中の夏号は、前回紹介した『文學界』5月号に負けず劣らず気合が入っている。(芥川賞に対して) 文芸 2018年 05 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/04/07…

第159回芥川賞① 候補作予想「送り火」高橋弘希(『文學界』5月号)

芥川賞は年に2回発表を行う。今年の7月にある第159回芥川賞選考会では、昨年の12月から今年の5月までに発表された作品が対象となる。候補として発表される作品は5作前後であることが多い。 まだ候補作は正式に発表されていないが(来月発表される作品も対象…

絶え間なく傷つき傷つけられ、それでも生きてゆく ~サラバ! 西加奈子~

2月のはじめにインフルエンザに罹り熱に浮かされながら読み始めたはずなので、読了には都合2か月ちょっとかかったことになる。西加奈子さんの『サラバ!』(小学館文庫)はえげつない小説だった。 サラバ! 上 (小学館文庫) 作者: 西加奈子 出版社/メーカー: …