五代文芸誌にばかり目を取られていた私を嘲笑うように飛び出てきた候補作。ここ最近の傾向から考えれば当然あり得る線だったのだ。早稲田文学。小説トリッパーは見ていたのだが、分量的に芥川賞の範疇だった高山羽根子さんの掲載作はあまりピンとこなかったので流してしまった。早稲田文学はノーマークだった。。。
第160回芥川賞② 候補作予想「宮水をめぐる便り」二瓶哲也(『すばる』7月号)
159回の候補作が先日発表された。本当に松尾さんが(いまさら)候補に挙げられるとは。そして「藁の王」「泥海」が候補に挙げられないとは。結構驚きの結果だった。
世間が159回芥川賞に盛り上がり始めたところで、パイオニアであるおところの私は半年以上先の160回の話をしようと思う。
今回は『すばる』7月号に掲載された二瓶哲也さんの「宮水をめぐる便り」を取り上げる。
『すばる』はここ数年芥川賞において元気がない。というよりこれまでに同誌掲載作が芥川賞を受賞したのは、三木卓さんの「鶸」(69回)、金原ひとみさんの「蛇にピアス」(130回)、田中慎弥さんの「共喰い」(146回)の3作だけだ。もともと芥川賞には強くない。が、金原さん田中さんは芥川賞の受賞によって社会に大きな影響を与えたので、すばると芥川賞の結びつきは実態以上に強く感じられる。
続きを読む第160回芥川賞① 候補作予想「窓」古川真人(『新潮』7月号)
光を生み出す職業と闇を見つめる職業
アイドルは、前者
学校の先生は、後者
大工さんは、前者
音楽家は、後者
作家さんは、たぶん前者
詩人は、絶対後者
パイロットとか花屋とか地雷除去員とか象使いとかテーラーとか花火職人とか
タクシーの運転手とか石屋とか手妻師とか蛇使いとかパーラーとか的屋とか
光が生み出されれば闇もまた生まれる
光を清潔なものとして尊び
闇を厭う心があるとしても
光があまりにまぶしく
闇のなかでしか生きてゆけぬと考えているとしても
だれも闇からは逃れられない
だれも光からは隠れられない
灼けつくばかりの光に身悶え
揺れる闇に呑まれる
責任なんて無責任なことばは使わないよ
大事な人がいればじゅうぶん
絶やさないで、絶対に
方言はカレー味
私は普段、小さいメモ帳を持ち歩いている。電子端末のメモ機能、ではなく、紙とペンである。そこに書き連ねるのは生の衝動、のようなものが多く、あとで見返してみるとそこには勢い以外に何もなく、意味を抽出するのは困難を極める、ということが多い。
松尾さん
隣の女は胃下垂
向かいの男は住所を知らない
私に松尾さん、という知り合いはいない。隣の女、とは順当に考えれば松尾さんの隣にいる女だろうか。さらに向かいの男は住所を覚えていないという。日常いろいろ不便なこともあるだろう。向かいというのは隣の女、の向かいなのだろうか。それとも松尾さんの向かいなのだろうか。松尾さんと女は隣り合っているので男がそれに対峙する側面にいることはわかるが、それ以上は特定できない。というか私はなぜこんなことを書いたのか、特定できる見込みはなく非常にもどかしい。
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