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文学者になりきれず周縁部でおまつりさわぎをするの巻

よりかかってもいいはずなのに ~ねむようこ トラップホール(3)~

ハル子さんこのまま帰ったら人に迷惑かけたーって落ち込むタイプでしょ

だから今の状況が苦しいんだよ

そーいうの”まあいいや”って放り投げずに苦しんでるハル子さんは

ちゃんとしてるよ

大丈夫

【トラップホール(3) P55より】

 

唐突に抜粋してみた。私に刺さったからだ。

上の文章はねむようこさんの「トラップホール」の3巻から抜粋した。

 

トラップホール(3) (FEEL COMICS)

トラップホール(3) (FEEL COMICS)

 

 ねむさんはダメ人間同士がずぶずぶの関係になっていく様を描くと抜群にうまい。

あまりにもダメ人間ばかり出てくるので特殊な状況を描いているかのような錯覚に陥ることもあるが、そんなことはない。

自分一人ではとても立っていられないような状況は誰にでも絶対ある。

一人で立っていられない者同士がよりかかっている世界が、ねむさんの作品には広がっているのだ。

私は一人では立っていられないとき、静かに腰をおろした。次の瞬間にはやにわに横になった。

立つことをやめたのだ。

いちど坐ってしまうと、横になってしまうと、次に立ち上がるのはとてもたいへんだ。

いまもまだ横になったまま動けていない。

 

しかし、ねむさんの作品に登場する人々は、なにがあっても倒れない強さを持っている。

いや強さは持っていない。倒れないためになにかによりかかる図太さを持っているのだ。

私は何にもよりかかることができなかった。世間体、外面を意識してしまって、誰にも知られることなく、静かに立つことをやめてしまった。

もちろん坐ったこと、横になったことで見えた世界もある。

だけどいつまでも坐ったまま横になったままでは生きていけない。

自分の足で立って荒れ狂う波の中を生き抜いていかなければ死んでしまう。

いま私は、死んでもいいと思っている。積極的に死を望んではいないが、生は諦めている。これが坐ったり横になっている状態なのだ。

生き抜く強さはどこにあるのか、いちど立つことをやめた私は再び立つことはできるのか。