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文学者になりきれず周縁部でおまつりさわぎをするの巻

思い悩む人へ リゼロのスバルから学ぶ

最近、社会で生きることの難しさ、を強く感じる。

誰も責任感を持っていない。他人に責任を押し付けて平然としている。

私は誰かが悪いとはっきりさせることがニガテであり、その所為でずいぶん割を食ってきた。

一つの失敗に関して100%誰かの責任である、という事態は稀である。特に社会では人と人との関わりあいにより物事が進展してゆくので複雑だ。

何でもかんでも自分の責任として引き受けていたところ、かなり疲れてしまった。

 

疲れ切った人の心をうまく表現した作品がある。

Re:ゼロから始める異世界生活」である。

 

 

私はこの作品をAmazonプライムで視聴した。(4/16追記:現在は視聴できなくなっている)

この作品は題名が示す通り突如異世界に送られてしまった少年スバルが、「魔女教」なる脅威がはびこる世界で出会った人々を救うために奔走する話だ(アニメ第一シーズン)。

一度目に見たとき、私は呑気な学生生活の真っ只中で、純粋に冒険活劇として楽しんだ。

エミリアよりもレムの方がヒロインじゃないか!などとぼやきながら非常に楽しんで視聴した。

2クール25話構成だが、18話までの数話は主人公スバルが思い悩み苦しむ様子が描かれている。

魔女教が繰り出す悪鬼羅刹さえも手を叩く執拗な攻撃の数々。スバルは何度も立ち向かい何度も死に、何度も大切な人を喪った。スバルはすべて己の怠惰のせいだと思い込んだ。そして壮絶な自己嫌悪に陥る。

初見時、このパートは視聴を続けるのが苦しかった。観終わってもあのパートは2度と見返すものかと思っていた。

 

しかし、このパートがあるからこそこの作品は名作なのだ。今はそう思う。

初見時は本当にのどかな生活を送っており、苦しみを知らない嬰児のような私だった。

のどかな私は、凄惨なスバルの心がダイレクトに迫ってくる本作に恐怖したのだ。

怖いから逃げたくなったのだ。

 

しかし現実世界の方がよっぽど怖い。理不尽で無責任な他者がリアルタイムで自分と関わりを持っているのだ。次に相手がどう出るかわからない。よかれと思ってやったことがやぶへびの結果を生むなど日常茶飯事だ。理不尽に責められどんどん自分が悪いと洗脳される。自己嫌悪のどつぼにはまり自分の中に答えを探す日々。

そうして現実の苦さを知った私は、スバルの状況を痛いほど理解できた。もはや怯えることはない。今となっては私がスバルなのだ。

以下に私が最も感情を動かされたスバルの叫びを引用する。

力なんてないのに望みは高くて、知恵もないくせに夢ばかり見てて
できることなんてないのに無駄に足掻いて
俺は、、俺は俺が大っ嫌いだよ
いつだって口先ばっかりで
何ができるわけでもねえのにえらそうで
自分じゃ何にもしねえくせに、文句つけるときだけは一人前だ
何様のつもりだ
よくもまあ、恥ずかしげもなく生きてられるもんだよなあ、なあ
空っぽだ、俺の中身はすかすかだ
決まってるさ、ああ当たり前だ
当たり前に決まってる
俺がここに来るまで、こうしてお前たちに会うような事態になるまで
何をしてきたかわかるか


何もしてこなかった
何一つ俺はやってこなかった
あれだけ時間があって
あれだけ自由があって
なんだってできたはずなのに
なんにもやってこなかった
その結果がこれだ
その結果が今の俺だ
俺の無力も無能も全部が全部
俺の腐りきった性根が理由だ
何もしてこなかったくせに
何かを成し遂げたいだなんて
思いあがるにも限度があるだろうよ
怠けてきたつけが、俺の盛大な人生の浪費癖が、俺やお前を殺すんだ
そうさ性根は何も、この場所で生きてくんだってそう思ったって何も変わっちゃいなかった
あのじいさんはおれのそこんところもきっちり見抜いていやがった
そうだろ
強くなろうとしてたわけでも、どうにかなろうと思ってたわけでもねえ
俺はただ、何もやってないわけじゃないんだって、努力してるんだって、そうやってわかりやすいポーズをとって自分を正当化してただけだ
しょうがないって言いたい仕方がないって言われたい
ただそれだけのために俺はああやって体を張ってるようなふりをしてたんだ
お前を付き合わせて勉強してたのだって、そのバツの悪さをごまかすためのポーズだったんだよ
俺の根っこは、自分可愛さで人の目ばかり気にしてるような小さくて卑怯で薄汚い俺の根っこは、何も、何も変わらねえ
本当はわかってたさ
全部俺が悪いんだってことくらい
俺は最低だ
俺は俺が大嫌いだよ

【18話より】

もともとスバルは責任感が強いのだ。自分で何とかしようとして精一杯、本当に死力を尽くして頑張った。そして何一つ結果はついてこない。現実世界でもあることだ。私の場合は最終的に一人で何もかも収拾をつけようとしてうまくできなかったとき、上司の管理不足の責任まで押し付けられた。

最初は私もスバルと同じように自己嫌悪の極致に陥った。周りの人に相談することはなかった。完全に「死ぬ」以外の選択肢が失われたとき、心療内科にかかった。そこでようやく、なぜ身の回りの人に相談しないのか、と問われた。私は答えられなかった。こういう問題は身近な人には言いにくいという心情がどこかにはあったのだろう。私は誰かに打ち明ける、誰かを頼るという選択肢を完全に失っていたのだ。だから専門家である心療内科を訪れた。そしてとても素朴な第一歩を示してもらった。

それからは親、友人など仕事に関係のない人に相談をしまくった。愚痴を言いまくった。自分では自分のことを正当化することができなかったが、私の周りには私の事を受け入れてくれる人が、思っていたよりもたくさんいた。

スバルの場合はレムがいた。かつてスバルを襲いかつてスバルに救われた鬼族の少女だ。

スバル君がいいんです、スバル君じゃなきゃいやなんです
空っぽで何もなくて、そんな自分が許せないならいまここから始めましょう
レムの止まっていた時間をスバル君が動かしてくれたみたいに
スバル君が止まっていると思っていた時間を、今動かすんです
ここから始めましょう
イチから
いいえ
ゼロから
一人で歩くのが大変ならレムが支えます
荷物を分け合ってお互いに支え合いながら歩こう
あの朝にそう言ってくれましたよね
カッコいいところ見せてください

【18話より】

スバルは誰も救えなかったと思い込んでいた。しかしレムはスバルに救われていた。

もし今、自分がダメな人間だと思っていて、自分なんてこの世界にいないほうがいいと思っている人はよく考えてみてほしい。

 

あなたがいたことで幸せを感じた人はこの世にいないのだろうか。

もしあなたの存在によって幸せを感じた人が一人でもいるなら、あなたの存在はこの世にとって必要なのだ。

得意なこと、苦手なこと、誰にだってある。

出来ること、出来ないこと、誰にだってある。

出来るようになれれば素晴らしいけど出来なくたって誰かを頼ればいい。そのためには普段からいざというときに助けてもらえるようにしないといけない。そのためにあなたは普段から周りの人を助けられる人でなければならない。助けられてばかりもカッコ悪い。

完璧超人じゃなくていいから、あなたのたいせつなひとのことを、本当に想って生きておいた方がいい。想いが届かなくて後悔することは、辛い。助けられたはずの人を助けられないことは、辛い。私には耐えられない。

 

私はあなたがこの世界を去るなら寂しいと思う。

私はあなたにこの世界にいてほしい。

同じ苦しみを味わった同士として、あなたの味方として。

 

最後にリゼロは関係ないけど好きな言葉。

「地球はみんなのものだから

 どこにいたっていいんだよ」

【『ゼツメツ少年』重松清