第160回芥川賞㉕ 受賞作予想「戦場のレビヤタン」砂川文次(『文學界』12月号)
なぜ候補入りしたんだろう
わからないなあ
この作品を6文字に要約すると「戦場での思索」となる。思弁的な作品はいいのだが、これはあまりにも未消化にすぎる。
こんなに思弁的なのにあくまで三人称視点で物語を進める意図も汲み取ることができなかった。
戦場という舞台設定で死に関する持論を展開している。それがあまりにもむき出しなので読んでいるとうるさく感じられてしまう。
死を期待することは異常ではない。死そのものは誰にでも訪れることだからだ。それを死ぬ寸前になって受け入れるか、それとも最後まで拒否して苦しむかはその人次第である。死は終わりではないが、生もまた始まりではない。いずれも分化であるのだ。自らを、死にたいする憧憬を持つという一点において異常者とするのは、やはり正当ではなく、死それ自体を異常事態として扱うことこそ摩訶不思議な仕組みなのだ。
(P119)
作者は自衛隊員だったようだ。その体験が創作動機なのだろうから、もっとじっくり向かい合って熟した作品を発表してほしい。