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第159回芥川賞⑱ 芥川賞直木賞受賞発表

今回は波乱の候補に対して順当な結果という、非常に芥川賞直木賞らしい選考だった。

BGMにニコ生をかけながら執筆するこの時間は、半年に一度の至福の時間だ。

 

受賞予想

芥川賞

送り火」高橋弘希(『文學界』5月号)

「風下の朱」古谷田奈月(『早稲田文学』2018年初夏号)

 

直木賞

『ファーストラブ』島本理生文藝春秋

『破滅の王』上田早夕里(双葉社

 

受賞作

芥川賞

送り火」高橋弘希(『文學界』5月号

文學界2018年5月号

文學界2018年5月号

 

 

直木賞

『ファーストラブ』島本理生文藝春秋

ファーストラヴ

ファーストラヴ

 

 

受賞作は2作とも文藝春秋。まさに順当。私の受賞予想は芥川直木ともに2作受賞を予想しており、それぞれ片方は的中したのだが、私の中の本命としては、それぞれ的中しなかった「風下の朱」『破滅の王』だったのだ。受賞すると強く思っていたわけではなかったが、いざ結果を見るとやはりちょっぴり寂しい。もちろん受賞した2作は本当に素晴らしかったので、選考結果に意義はない。

 

候補発表からほどなく、「美しい顔」騒動があったり、『早稲田文学』騒動があったりしたが、ふたを開けてみればいつも通りの芥川賞。実家のような安心感。

受賞した高橋さんの作品は暴力描写がきちんと読者の眉をひそめさせるだけの力を持っており、しかもその描写が作品のテーマにうまく結実している。そこが一番の受賞の決めてだったのではないだろうか。

 

直木賞の方は、正直前回の候補作の方が私の好みだったのだが、人間をきちんと描く、という根幹をしっかり守ってくれた秀作が受賞したのだと思う。島本さんのこれまでの歩みは勝手に見てきたので、直木賞の受賞は素直にうれしい。

 

受賞しなかった作品も含めて、2018年上半期の純文学は、読書の面白みとして味が濃かったと思う。下半期はいったいどんな作品が待っているのだろう。過度に期待はせずぼちぼち読んでいこうと思う。

大衆文芸はあまり大きな騒ぎは聞かなかった。ついこの間、『ルビンの壷が割れた』で世間を騒がせた宿野かほるさんが第2作を発表されたくらいか。159回がいろいろと面白過ぎたのでしばらくは穏やかな日々でもいーや、と思っている。

 

さあここから受賞者の会見だ。お祭りはまだまだこれからぞ。