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第160回芥川賞⑭ 候補作予想「わるもん」須賀ケイ(『すばる』11月号)

 町屋さんの作品があまりにも深く刺さってきたので、こういう何も語っていない作品は新鮮に感じられた。まあ、つまらないということは隠しようもなかったが。

すばる2018年11月号

すばる2018年11月号

 

  あまりにもつまらないので、読むスピードを上げた。そのせいで眠くなる暇もなかった。

 今季の新人賞は子ども視点が流行ってるのかしら、と思ったが、新潮とすばるくらいか。しかし3誌中2誌でテーマがかぶってれば十分だろう。子ども視点といえば、芥川賞候補としてもおなじみの今村夏子さんが思い浮かぶ。今村さんは子ども視点を効果的に用いて現実社会の気持ち悪さ、いびつさを描き出している。新潮の「いかれころ」もまあまあその企みは活きているのではないかと思った。しかしこの作品にはそういう企みが感じられなかった。ただ子ども視点で日常を描きたかったかもしれない。冒頭など純子ちゃんの日々の過ごし方がとてもかわいくて読んでいて非常に愉しかった。しかし中盤以降のこの仄めかし方をしたいなら、もう少し子ども視点の活かし方を考えたほうがよかったのではないだろうか。

 

 全速力流し読みをしてしまったのでほとんど内容に踏み込むことができなかった。流し読みをさせてしまう作品であったという点で私の好みではない。私の感想としては芥川賞にふさわしくない。もしも芥川賞候補になることがあれば、そのときこそ全力で読み込むことにする。