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第160回芥川賞㉖ 番外編Ⅳ 直木賞受賞作予想『童の神』今村翔吾(角川春樹事務所)

このタイミングで今年の最高傑作に出会えるとは思わなかった

童の神

童の神

 

  角川春樹小説賞という公募文学賞の受賞作がいきなり直木賞の候補作となった。すでに今村さんはデビューされており単行本も出ているが、それでもまだまだ駆け出しの作家さんである。直木賞を取るにはハードルが高い。

 しかしこれだけの力作ならさすがに選考委員諸氏も認めざるを得ないのではないか。時代小説は普段ほとんど読まない私が、平安時代というまったくなじみのない時代を舞台にされてなお、手に汗握り涙をこぼしつつ読むことができた。

 舞台は藤原氏隆盛の西暦1000年前後。童と呼ばれる化外の民は洛中の京人(みやこびと)から迫害されていた。敵味方それぞれの将が登場するが、全員自分の主義に従って生きておりカッコいい。権力をほしいままにしている藤原氏だけが世界に不幸をもたらしている。と一面的に口調も強くなってしまうほどこの物語に入れ込んでしまった。

 権力に虐げられる側を中心に物語は進んでゆくが、権力側の将にも少なからず光は当てられている。これがこの物語が決定的に偏り過ぎてしまうところをぎりぎりで支えている要因だと思う。(それでも藤原氏だけは本当に憎い...)

 なぜかわからないけどいまはこの物語を分解して腹に落とし込むようなことはしたくない。作品名で気になって検索している人にはまったく用をなさない記事であるが、時間が経って距離が置かれたときに改めて取り上げるかもしれない。

 衝撃が大きすぎて冷静に評価をすることはできなさそうだ。ただこの作品が受賞しないならもう直木賞なんていらない。

 

 という感想を年末一気に書き上げていたが、あまりにものぼせ上りすぎているのでいったん投稿せずにおいた。しかし私にはこの作品を的確に評するだけの読書経験がなく、これ以上の質の向上は望めないため恥を忍んでこのまま公開することとする。