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文学者になりきれず周縁部でおまつりさわぎをするの巻

第159回芥川賞⑯ 受賞作予想

いよいよ明日は芥川賞発表日だ。

世間はサッカーのワールドカップが終わり、お祭りは終わったと思っているだろうが、私たちのお祭りはこれからだ。お祭りの観戦に備えてケンタッキーとコーラを準備したいと思う。無条件でテンション上がりませんか?ケンタッキーとコーラ。

候補作のまとめはこちら

 

総評

候補作のレベルは総じて高かった。候補作以外でも松井周さんの「リーダー」、新庄耕さんの「サーラレーオ」、谷崎由依さんの「藁の王」など読んでよかったと思えるものが多かった。何度も蒸し返して恐縮だが、ここに陣野さんの「泥海」なんかが紛れてしまっていたらガッカリだったろう、そうならなくてよかった。しかし入ってくる可能性はかなり高いと思っていたので意外だった。

今回の芥川賞はいろいろ話題に事欠かない印象だが、なかでも一番は「美しい顔」剽窃疑惑だろう。参考文献を明示しなかっただけでなく、ノンフィクション作品のクリエイティブな表現の部分から文末や語尾を変えただけの丸パクリをしていたのだから非難されることもあるだろう。しかし私はこの作者には本当に書く力があると思う。たとえ一部分表現をパクっていたとしても、物語の骨子までパクったわけではないようだ。そうである限り私はこの作家の力を否定しない。ただこの作品で芥川賞の候補を受けるべきではなかったと思う。講談社による経緯説明によれば、5月中には問題が顕在化していたようだ。ならば芥川賞の話が出た時点で辞退も考えたはずだ。そうすればここまで問題も大事にならなかったかもしれない。今回の候補入りは徒に名誉を傷つける結果に終わるのではないだろうか。一連の流れすべてに関して、『群像』や講談社の対応はあまりよくなかったと思う。

 

受賞作予想

そんな力作ぞろいの今回の芥川賞だが、改めて受賞作を予想する。

受賞予想作は

送り火」高橋弘希(『文學界』5月号)

「風下の朱」古谷田奈月(『早稲田文学』2018年初夏号)

の2作である。

前回も2作受賞なので微妙なところではあるが、今回は2作受賞にしてほしい。芥川賞史からいくと、力作ぞろいの回はかえって1作受賞に落ち着く傾向にあり、涙を呑んだ候補作品、候補作家も数多い。そう考えると高橋さん1作かもしれないが、古谷田さんの作品は何度でも言うが「題名が良い」のだ。題名が良い作品は名作だという私の中の定義を踏まえると、どうしても「風下の朱」は推さないわけにはいかない。受賞したら単行本買うよ。

無限の玄/風下の朱 (単行本)

無限の玄/風下の朱 (単行本)

 

 他の候補作に関して言うと、まず松尾スズキさんは本当に面白い作品を書かれました。ただどうしても「ギャグ枠」という印象を拭えず、過去で言うと羽田さんの「メタモルフォシス」や戌井さんの「ひっ」と似た印象だ。松尾さんはすでに芥川賞の枠に収まらない活躍をしていると思うので受賞の必要もないだろう。という身勝手な判断。

町屋さんは以前のブログでも触れた通り、作品のなかで出来不出来にムラが感じられた。今作の着想であればあれほどの長さがなくともまとまると思うので、構成を見直して短編にリライトしてみてほしい。(偉そう)

最後に北条さんだが、やはり今回は涙を呑むことになるだろう。それは作品の出来不出来によるものではない。作品にまつわるワイドショー的ネタのせいである。これは作者自身の責任でもあるだろうが、担当編集者たちの怠慢によるところもあるだろう。次作が日の目を見ることを期待しているので、早めに159回のことは忘れて執筆に取り掛かられることをおすすめします。

 

猛烈に眠くなってきたが、これから窪美澄さんの『じっと手を見る』を読む。眠気を吹っ飛ばすような作品なのだろうか。果たして...!