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文学者になりきれず周縁部でおまつりさわぎをするの巻

私の芥川賞受賞作品への評価

先の記事で陣野さんの作品を酷評してしまった。好みに合わないとどうしても評価をしにくくなってしまう。芥川賞予想をするとき以外は、よほど心に深く刻まれた作品しか取り上げないので好みでない作品を評価することに慣れていないのだ。陣野さんはお忙しい方だと思うので、エゴサに引っかかってこんなインターネットの場末までお越しにならないことを願う。

さて、そんな私の好みはどんななのかということで、これまでに読んだ芥川賞作品79作を五段階評価で列挙していく。

 

といったしりからなんだが、私の中でレジェンドに君臨する作品があるので、まずそれだけ紹介する。

第143回芥川賞受賞作である赤染晶子さんの「乙女の密告」だ。

 

乙女の密告 (新潮文庫)

乙女の密告 (新潮文庫)

 

 この作品はアンネの日記を暗唱するために特訓に励む女子大生たちが登場するのだが、とにかくキャラクターが立っていて面白い。「芥川賞ってこんなに面白いの!」と捉え方が大きく変わること間違いなし。そしてそのコメディタッチに裏付けて描かれるこの作品の本質を読み解いたとき、この作品の捉え方は大きく変わるだろう。人生の中でこんなに繰り返して読んだ本もない。私の中のレジェンド。

 

いきなりのレジェンドを紹介したところで、ここからはいよいよ評価していく。星の数が多いほど評価が高いと言うことだ。以下、敬称略とする。()内の数字は芥川賞の受賞回を示す。

 

☆×5 傑作、ぜひ読むべき

津村節子「玩具」(53)、丸山健二「夏の流れ」(56)、池澤夏樹スティル・ライフ」(98)、村田沙耶香コンビニ人間」(155)

 

☆×4 秀作、読んで損はない

尾崎一雄『暢気眼鏡』(5)、三浦哲郎忍ぶ川」(44)、古井由吉「杳子」(64)、新井満「尋ね人の時間」(99)、南木佳士ダイヤモンドダスト」(100)、大岡玲「表層生活」(102)、藤野千夜「夏の約束」(122)、 町田康「きれぎれ」*1(123)、青来有一「聖水」(124)、モブ・ノリオ「介護入門」(131)、絲山秋子沖で待つ」(134)、青山七恵「ひとり日和」(136)、楊逸「時が滲む朝」(139)、又吉直樹「火花」*2(153)

 

☆×3 凡作、読む必要はない

櫻田常久「平賀源内」(12)、 松本清張「或る「小倉日記」伝」(28)、安岡章太郎「悪い仲間」「陰気な愉しみ」(29)、吉行淳之介「驟雨」その他(31)、庄野潤三プールサイド小景」(32)、遠藤周作「白い人」(33)、北杜夫「夜と霧の隅で」(43)、河野多恵子「蟹」(49)、田辺聖子「感傷旅行」(50)、丸谷才一「年の残り」(59)、 庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」(61)、古山高麗雄「プレオ―8の夜明け」(63)、 中上健次「岬」(74)、高橋揆一郎「伸予」(79)、吉行理恵「小さな貴婦人」(85)、高樹のぶ子光抱く友よ」(90)李良枝「由熙(ユヒ)」(100)、小川洋子「妊娠カレンダー」(104)、又吉栄喜「豚の報い」(114)、辻 仁成「海峡の光」(116)、長嶋有「猛スピードで母は」(126)、吉田修一パーク・ライフ」(127)、阿部和重グランド・フィナーレ」(132)、中村文則「土の中の子供」(133)、諏訪哲史「アサッテの人」(137)、津村記久子「ポトスライムの舟」(140)西村賢太苦役列車」(144)、藤野可織「爪と目」(149)、柴崎友香「春の庭」(151)、羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」(153)、本谷由紀子「異類婚姻譚」(154)、石井遊佳百年泥」(158)、若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」(158)

 

☆×2 駄作、読まない方がいい

石原慎太郎太陽の季節」(34)、開高健「裸の王様」(38)、池田満寿夫エーゲ海に捧ぐ」(77)笠原淳「杢二の世界」(90)、多和田洋子犬婿入り」(108)、保坂和志「この人の閾」(113)、川上弘美「蛇を踏む」(115)、 花村萬月ゲルマニウムの夜」(119)、藤沢周ブエノスアイレス午前零時」(119)、 松浦寿輝「花腐し」(123)、堀江敏幸「熊の敷石」(124)、玄侑宗久「中陰の花」(125)、 大道珠貴「しょっぱいドライブ」(128)、金原ひとみ蛇にピアス」(130)、綿矢りさ蹴りたい背中」(130)、伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」(135)、川上未映子「乳と卵」(138)、磯崎憲一郎「終の住処」(141)、朝吹真理子「きことわ」(144)、田中慎弥「共喰い」(146)、鹿島田真希「冥土めぐり」(147)、小山田浩子「穴」(150)、小野正嗣「九年前の祈り」(152)、滝口悠生「死んでいない者」(154)、 山下澄人「しんせかい」(156)、沼田真佑「影裏」(157)

 

☆×1 悪文、読んではいけない

村上龍限りなく透明に近いブルー」(75)、笙野頼子「タイムスリップ・コンビナート」(111)、柳美里「家族シネマ」(116)、平野啓一郎日蝕」(120)、円城塔「道化師の蝶」(146)、黒田夏子abさんご」(148)

 

 

こうして列挙してみると私の好みも浮かび上がってくる。軽くて読みやすい作品が好みなのだ。本を読みだしたきっかけが星新一であったことと関係はあるだろうか。

☆3つの可もなく不可もない作品がとても多いことがわかった。哀しいことだ。

私の書評を見るときはこんな感じの好みの人間が書いていることを念頭においていい感じに距離を置いてほしい。あくまで私見なので好みは入ってしまう。

*1:この作品だけで見ると順位が高すぎるかもしれないが、本作が氏の創作活動に占める意味などを鑑みてこの順位にある

*2:「火花」は世間に広く知られていることを踏まえ、教養として読んでも悪くないという意味でこの順位にある