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文学者になりきれず周縁部でおまつりさわぎをするの巻

下書きを編集①

私が妹と二人暮らしをするようになって二回目の春がやって来た。

母がいなくなった当初こそ、きょうだいで家事を分担していた。お風呂掃除、食器洗い、洗濯物を干して乾いたら取り入れる、これらはすべて妹がやることにした。私の役割は「ほかのことぜんぶ」だった。

はじめから不公平な取り決めだったのに妹は守らなかった。部活が忙しいと言っては夜遅く帰ってくる。休みの日は昼頃まで寝ていたかと思えば「バイト」と言って出かけていく。これでは家事をするひまがない。

しかたなく私が引き受けているのに妹はそれを当然だと思っているようだ。

しかし私はそれを取りあげたりしない。妹を家に縛り付けたくないのだ。

もともと母も望んでこの家に来たわけではなかった。

私たちの両親はお見合いで結婚した。信金の受付だった母と役場で経理をしていた父、ずいぶん手堅い結婚だった。

結婚して母は勤めを辞めた。特に仕事に思い入れがあったわけではない。

仕事を辞めても母の生活は特に変わらなかった。もともと社交的ではなかったので、職場でも必要以上に交流を持つ人もいなかった。家事をするための時間が長くなっただけだ。

結婚後はじめに暮らした家は築四十年のボロアパート。部屋はふたつ。ひとつは食事部屋、もうひとつは睡眠部屋。最小限の暮らしだった。母は暇を持てあましていた。

それがどれだけ贅沢だったか、母は思い知る。

結婚してはじめての正月、無精な両親は初詣も行かず母と父は家に居た。ふたりは昼過ぎ、ぼちぼち挨拶にでも行くかと重い腰を上げ、父方の実家へと向かった。歩いて十五分。家の前に車が停めてあった。父の弟夫婦のもの。

ふたりが中に入るとはたして豪快な笑い声が聞こえた。

「おおお咲子さんよう来た。健一もこっち来て座れ」

母はすでにへべれけの祖父に誘われ床の間の脇に腰を下ろした。祖父の煙草の煙が顔にかかる位置だったそうだ。