象の鼻-麒麟の首筋.com

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第160回芥川賞⑧ 番外編Ⅱ 直木賞候補作予想『夏空白花』須賀しのぶ(ポプラ社)

新聞記事を使ったチラシ、専用ツイッターなど出版社の力の入れようが伺えるこの作品。戦後、学生野球の復活に奔走する新聞社員の姿というのは直感で「読みたい!」と思ったものだった。直感は外れた。 夏空白花 作者: 須賀しのぶ 出版社/メーカー: ポプラ社 …

第160回芥川賞⑦ 候補作予想「春、死なん」紗倉まな(『群像』10月号)

群像 2018年 10 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/09/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 七十歳の身体から、傍目には既に抜け落ちたと思われている性欲。それが枯渇どころか、実際には持て余すようにしている――。高齢者の性を…

第160回芥川賞⑥ 候補作予想「波に幾月」藤代泉(『文藝』秋号)

古市さんの作品がアタリだったのに対し、今度はバランスを取るように非常に退屈な作品に出会った。あまりにも退屈過ぎてわずか原稿用紙92枚の短編なのに何度も居眠りをしてしまった。藤代泉さんの「波に幾月」はつまらない作品だった。 文芸 2018年 08 月号 …

第160回芥川賞⑤ 候補作予想「平成くん、さようなら」古市憲寿(『文學界』9月号)

久しぶりの更新になってしまった。 わざわざ申し開きをする必要もないだろうが、私はこの候補作予想をするにあたって、文芸誌を購入することはほとんどない。前回の第159回のときは松井周さんの「リーダー」があまりにも素晴らしかったので『文藝』夏号を購…

小品「失敗」

自転車の外装チェーンがズボンのすそを噛みちぎる。ヒッピー、あるいはホームレスのようにずたずたなズボンのすそと、走行不能な自転車のふたつを私は持て余す。朝から予定外に時間を浪費し、そして濫費することが確定した。今朝はただでさえ小寝坊をかまし…

第160回芥川賞④ 番外編Ⅰ 直木賞候補作予想『不在』彩瀬まる(角川書店)

彩瀬さんは2010年にR-18文学賞でデビューし第158回の直木賞候補にも挙げられた中堅作家である。前回直木賞の候補になった『くちなし』は読んでいないのだが、世評によると幻想小説であり、『やがて海へと届く』という作品で野間文芸新人賞の候補になったこと…

第160回芥川賞③ 候補作予想「シェーデル日記」四元康祐(『群像』7月号)

四元さんはもう還暦間近のベテラン詩人だ。最近は小説にも挑戦しており、数年前に野間文芸新人賞の候補にも挙げられている。 今回取り上げた「シェーデル日記」は、群像に掲載された原稿用紙100枚の中編だ。どうやらシリーズものらしい。 群像 2018年 07 月…

第159回芥川賞⑱ 芥川賞直木賞受賞発表

今回は波乱の候補に対して順当な結果という、非常に芥川賞直木賞らしい選考だった。 BGMにニコ生をかけながら執筆するこの時間は、半年に一度の至福の時間だ。 受賞予想 芥川賞 「送り火」高橋弘希(『文學界』5月号) 「風下の朱」古谷田奈月(『早稲田文学…

第159回芥川賞⑰ 番外編Ⅲ 直木賞受賞作予想決定版 『じっと手を見る』窪美澄(幻冬舎刊) 『未来』湊かなえ(双葉社刊)

室温摂氏36度、2週間前に買った和風ツナマヨのおにぎりを発見して小さく悲鳴を上げる。どれだけ疲れていても食べ物の類は絶対に粗末に扱わないことを固く誓った夏の夕方。 いよいよ芥川賞直木賞の発表が近づいてきた。すでに選考会は始まっているはずだ。ド…

第159回芥川賞⑯ 受賞作予想

いよいよ明日は芥川賞発表日だ。 世間はサッカーのワールドカップが終わり、お祭りは終わったと思っているだろうが、私たちのお祭りはこれからだ。お祭りの観戦に備えてケンタッキーとコーラを準備したいと思う。無条件でテンション上がりませんか?ケンタッ…

第159回芥川賞⑮ 番外編Ⅱ 直木賞受賞作予想『破滅の王』上田早夕里(双葉社刊)

今回の直木賞は双葉社から2作候補入りしている。双葉社といえば「クレヨンしんちゃん」で有名な『漫画アクション』や『月刊まんがタウン』などを発行している出版社だ。直木賞との縁は薄く、なんと候補入りした最新の記録は第116回(1996年度下半期)の篠田…

深海で肥大するウミグモのように、思春期のエゴは現代でこそ無限に肥大する ~てらさふ 朝倉かすみ~

さいきん芥川直木賞関連の作品の読み込みをさぼっている。前回記事を更新してからの2週間は、結構体調を崩していた。その間、『楢山節考』『スタッキング可能』『異人たちとの夏』『海と毒薬』『ららら科學の子』『パンク侍、斬られて候』などを読んでいた。…

第159回芥川賞⑭ 受賞作予想「風下の朱」古谷田奈月(『早稲田文学』2018年初夏号)

五代文芸誌にばかり目を取られていた私を嘲笑うように飛び出てきた候補作。ここ最近の傾向から考えれば当然あり得る線だったのだ。早稲田文学。小説トリッパーは見ていたのだが、分量的に芥川賞の範疇だった高山羽根子さんの掲載作はあまりピンとこなかった…

第159回芥川賞⑬ 番外編Ⅰ 直木賞受賞作予想『ファーストラヴ』島本理生(文藝春秋刊)

受賞作予想編、開幕からいきなり番外編。島本さんの直木賞候補作『ファーストラヴ』を読んだ。 ファーストラヴ 作者: 島本理生 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2018/05/31 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る いまリンクを張り付けて気付いた…

第160回芥川賞② 候補作予想「宮水をめぐる便り」二瓶哲也(『すばる』7月号)

159回の候補作が先日発表された。本当に松尾さんが(いまさら)候補に挙げられるとは。そして「藁の王」「泥海」が候補に挙げられないとは。結構驚きの結果だった。 世間が159回芥川賞に盛り上がり始めたところで、パイオニアであるおところの私は半年以上先…

第159回芥川賞⑫ 候補作決定(直木賞も)

ついに決定した第159回芥川賞候補作(と第159回直木賞候補作) 私なりの芥川賞候補作予想は次の記事にまとまっている。 tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com 芥川賞直木賞それぞれ以下の作品が候補となっている。

第160回芥川賞① 候補作予想「窓」古川真人(『新潮』7月号)

159回の候補作はまだ発表されていないが、160回は待ってくれないのだ。さっそく候補作を予想してゆこう。 今回は古川真人さんの「窓」を取りあげる。『新潮』7月号掲載作。 新潮 2018年 07 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/06/07 メディア: 雑誌 …

光を生み出す職業と闇を見つめる職業

アイドルは、前者 学校の先生は、後者 大工さんは、前者 音楽家は、後者 作家さんは、たぶん前者 詩人は、絶対後者 パイロットとか花屋とか地雷除去員とか象使いとかテーラーとか花火職人とか タクシーの運転手とか石屋とか手妻師とか蛇使いとかパーラーとか…

方言はカレー味

私は普段、小さいメモ帳を持ち歩いている。電子端末のメモ機能、ではなく、紙とペンである。そこに書き連ねるのは生の衝動、のようなものが多く、あとで見返してみるとそこには勢い以外に何もなく、意味を抽出するのは困難を極める、ということが多い。 松尾…

剥き出しの人間性~永沢君 さくらももこ~

永沢君といえば、ちびまるこちゃんの登場人物であるタマネギの名前である。『永沢君』は彼と、彼の友人である藤木君小杉君にフォーカスを当てたスピンオフ作品である。 永沢君 (イッキコミックス) 作者: さくらももこ 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2003/…

第159回芥川賞⑪ 候補作予想まとめ

第159回芥川賞の受賞発表は7月18日(水)に行われるそうだ。 www.bunshun.co.jp 候補作は受賞発表のだいたい一か月前に行われることが多い。今回ならば6月18日あたりだろう。 追記:ドンピシャで6/18だそうだ それに先駆けて候補作から予想するという不毛な取…

第159回芥川賞⑩ 候補作予想「藁の王」谷崎由依(『新潮』6月号)

もしかして2018年上半期は豊作なのではないだろうか。 新潮6月号に掲載された谷崎由依さんの「藁の王」を読みながらそんなことを思った。 新潮 2018年 06 月号 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/05/07 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る 原稿…

小説だからこそ、ってなんだろう

私は小説が好きなのだ。読書が、文字を読むことが好きなのだ。活字離れなんて言葉もそこかしこで聞かれる世の中で、私は文字を読むことに飢えている。 私はなぜ活字離れができないのか、なぜ世間では活字離れが進んでいると言われているのか。この不可思議は…

第159回芥川賞⑨ 候補作予想「美しい顔」北条裕子(『群像』6月号)

昨年の芥川賞は上半期157回、下半期158回ともに新人賞受賞作が受賞した。 こういう流れは案外無視できないものなので、講談社が刊行する『群像』の新人賞「群像新人文学賞」の受賞作を読んでみた。 群像 2018年 06 月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 講談社 発売…

無償の愛の重さ 〜かがみの孤城 辻村深月〜

端的に結論を述べる。 とても良い作品だった。 学校へ通えない子ども7人に与えられたかがみの中のお城。「城にはなんでも願いが叶う鍵」があり、彼らはそれを見つけようとする。 導入からしてファンタジーである。ファンタジックな世界設定も嫌にならず読み…

おそらく、いまのわたしの大部分を形作るものたち 他人にムリにでも押し付けたい作品群

ある友人から「オススメの本のリストを作ってほしい」と言われた。いい機会なのでこれまでに溺れるほどに摂取し続けた作品群の中から選りすぐりの「いやだと言っても無理にでも押し付けたい作品群」リストを作ってみようと思う。本に限らずアニメや漫画も存…

夏が待ち遠しいという感情、青春は頭上を素通りしていった 神聖かまってちゃん(鈴木瑛美子×亀田誠治)”フロントメモリー”

昨日、サイダーガールというバンドの「パレット」という曲がとてもいい、エンリピしていると言った舌の根も乾かぬうちに次の曲である。 神聖かまってちゃんという名前はどこかで聞いたことがあった。しかし実態を全く知らず、地下アイドルかなんかだと思って…

美少女、ジェンダー、価値、偏愛 サイダーガール ”パレット”

最近セクハラが社会現象になっている気がする。人が嫌だと思うことをするな、という大原則が守られれば根本的な問題の大半は解決するのだが、人は自分が責められる事態に直面すると、非を認めにくい傾向にあるようだ。それだけでは解決しないのは女性側が立…

第159回芥川賞⑧ 候補作予想「もう『はい』としか言えない」松尾スズキ(『文學界』3月号)

松尾スズキさんはずいぶん前に二度ほど芥川賞の候補になったことがある。演劇畑の方が芥川賞を受賞するというのはときどきあることで、第156回の山下澄人さん、第154回の本谷有希子さん、古くは第116回の柳美里さんや第88回の唐十郎さんもいる。 それにして…

第159回芥川賞⑦ 候補作予想「羽衣子」木村紅美(『すばる』3月号)

木村さんは前回の芥川賞でも候補入りしていた。 tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com 前作では概ね佳作だとの評価を得ながらも、受賞へと突き抜ける力は足りないとの評が下された。 私は前作を読んで 端的に言えば、作品世界がきれいに映像化できた、という…