象の鼻-麒麟の首筋.com

お便りはこちら→tsunakokanadarai@gmail.com

第160回芥川賞㉘ 番外編Ⅴ 直木賞受賞作予想『ベルリンは晴れているか』深緑野分(筑摩書房)

 

ベルリンは晴れているか

ベルリンは晴れているか

 

  ミステリーとして評価が高い印象だが、むしろミステリーは付加的な要素だった。骨子にはWWⅡやナチスがドイツに遺したものに翻弄されるひとびとの生活があった。『アンネの日記』や『アドルフに告ぐ』ですでにある程度の素養を得ていたからかもしれないが、当時の生活がとても実感を持って湧き上がってきた。そして改めて『乙女の密告』を読み返したくなった。

 直木賞を取れるかというと残念ながら厳しいとは思う。読み物としての面白さが森見さんや今村さんに勝っているとはとても言えない。物語の背景に何を持っているかという強さはあるが、それも他の作品と比べてはるかに優れていると言えるほどではない。非常に身もふたもない言い方になるが、この作品は中途半端というかあまり心に残らないのだ。もしミステリーとして際立った部分があればまた違ったのだろうが、そちらの側面も非常にオーソドックスでそつなくまとまっているという印象だ。あとから論じる気にもあまりならない。選考委員諸氏は責任をもって選考にあたるだろうが、一読者としてはそこまでする義理はない。受賞作として広く世に知れ渡るべき作品はほかにある。

第160回芥川賞㉗ 受賞作予想「ニムロッド」上田岳弘(『群像』12月号)

  今回はできる限り一度読んだ作品も再読して受賞作予想をしようと思う。

tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com

  再読したところ「こんなに薄い話だったか」という感想を抱いた。知らない世界を垣間見ることができたというところにこの作品の面白さはあったのだろう。ならば再読で同じだけの面白さを感じることは難しいだろう。駄目な飛行機コレクションや鼎談を機にニムロッドや田久保紀子と連絡を取れなくなったことをどうとらえるか、涙というモチーフの効果などいろいろ考えるものはありそうだが、強く興味を抱くかと言われるとそうでもない。今回の候補作には横文字を多用するものが多かった。そのすべてがはたして自覚的にそれらのモチーフを使いこなすことができているのかと言うと甚だ疑わしい。独り善がりな前衛芸術ではなく、もっと小説と正面から組み合ったような作品が読みたい見てみたい。

第160回芥川賞㉖ 番外編Ⅳ 直木賞受賞作予想『童の神』今村翔吾(角川春樹事務所)

このタイミングで今年の最高傑作に出会えるとは思わなかった

童の神

童の神

 
続きを読む

第160回芥川賞㉕ 受賞作予想「戦場のレビヤタン」砂川文次(『文學界』12月号)

なぜ候補入りしたんだろう

文學界 2018年12月号

文學界 2018年12月号

 

 わからないなあ

続きを読む

第160回芥川賞㉔ 受賞作予想「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」鴻池留衣(『新潮』9月号)

なにがなんだかわからなかった

新潮 2018年 09 月号

新潮 2018年 09 月号

 

以前読んだときは適当に読み飛ばしてしまってなにがなんだかわからなかった

tsunadaraikaneko-538.hatenablog.com

今度はじっくり時間をかけて、されどなにがなんだかわからなかった

続きを読む

第160回芥川賞㉓ 受賞作予想「居た場所」高山羽根子(『文藝』冬季号)

やっと読んだ 

文芸 2018年 11 月号 [雑誌]

文芸 2018年 11 月号 [雑誌]

 

 なんだかぞわぞわした

続きを読む

第160回芥川賞㉒ 候補作決定(直木賞も)

きたきたきたきたきた波乱やないかい

www.bunshun.co.jp

www.bunshun.co.jp

 

とりあえず私の予想と照らし合わせてみる

 

芥川賞候補作

実際の候補作

上田岳弘「ニムロッド」(『群像』12月号)→候補入り3回目(第154回以来)

鴻池留衣「ジャップ・ン・ロール・ヒーロー」(『新潮』9月号)→初候補

・砂川文次「戦場のレビヤタン」(『文學界』12月号)→初候補

高山羽根子「居た場所」(『文藝』冬季号)→初候補

古市憲寿「平成くん、さようなら」(『文學界』9月号)→初候補

町屋良平「1R1分34秒」(『新潮』11月号)→候補入り2回目(連続2期候補入り)

 

金盥予想:的中率2/6(33.3%)

古市憲寿「平成くん、さようなら」(『文學界』9月号)→〇

石田千「鳥居」(『文學界』10月号)→×

坂上秋成「私のたしかな娘」(『文學界』10月号)→×

三国美千子「いかれころ」(『新潮』11月号)→×

町屋良平「1R1分34秒」(『新潮』11月号)→〇

岸政彦「図書室」(『新潮』12月号)→×

 

直木賞候補作

実際の候補作

・今村翔吾『童の神』(角川春樹事務所)→初候補

垣根涼介『信長の原理』(KADOKAWA)→候補入り2回目(第156回以来)

真藤順丈『宝島』(講談社)→初候補

森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)→候補入り3回目(第156回以来)

深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)→候補入り2回目(第154回以来)

 

金盥予想:的中率2/6(33.3%)

彩瀬まる『不在』(角川書店)→×

須賀しのぶ『夏空白花』(ポプラ社)→×

増山実『波の上のキネマ』(集英社)→×

森見登美彦『熱帯』(文藝春秋)→〇

町田その子『ぎょらん』(新潮社)→×

・深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)→〇

続きを読む